日本で外国人が暮らす・働くためには「ビザ」と「在留資格」が重要だと言われます。
既に日本で暮らしている外国人の方や外国人とかかわる方は「就労ビザじゃないから、、、」「ビザ更新しないと」「ビザが取れない」といった会話が普通にあるでしょう。日常生活ではこの「ビザ」と「在留資格」の厳密な違いについて意識することはなく、また生活に大きな支障が出ることもあまりないかもしれません。しかし、「ビザ」と「在留資格」には明確な違いがあり、またその違いを知っておくことで申請や手続きを間違えることなく、しっかりと理解して進めることができます。特に初めて日本へ来る外国人の方、外国人とかかわることになった方向けに分かりやすく、丁寧に違いを説明します。
この記事はこんな人におすすめ!
- 日本で新しく暮らそうとしている外国人の方
- 外国人を雇用しようとしている法人、団体の方
- 「ビザ」の話でなんだか話がかみ合わないと感じた方
「ビザ」と「在留資格」の違い
「ビザ=在留資格」
このような認識で発信されている情報がとても多くあります。日々の会話もそういった情報に基づいているため、この認識がとても一般的になっています。
正直なところ、「ビザ=在留資格」として会話をしていても問題にならないことも多くあります。相手の方と同じものについて話ができていると確信があれば、申請のプロである行政書士も在留資格のことをあえて「ビザ」と呼ぶこともあります。「在留資格」という四字熟語は日本人でも何となくわかりにくいと感じるのではないでしょうか。日本語を学習した外国人なら、もっととっつきにくいと感じてしまうのは自然なことです。
前置きが長くなってしまいましたが、「ビザ」と「在留資格」の違いについて簡単に説明すると、
ビザは日本に入るときに1度だけ必要なもので、在留資格は入国後、日本に滞在中にずっと必要なものです。
例えば、日本のコンビニで働いている外国人の方に「ビザは何ですか?」と聞くと、「留学ビザです」と答えてくれる場合がほとんどだと思われます。本来は「在留資格は何ですか?」と聞き、「留学(の在留資格)です」と答えるのが正確なのですが、「ビザ」という表現のほうがむしろ通じやすくなっています。
では、どうしてこのような本来の言葉の定義と実際の使われ方がずれてしまったのか、それぞれについてみていきましょう。
「ビザ(査証)」って何?
査証(ビザ)は「入国許可証」のようなもの
「ビザ」は日本語の正式名称では「査証」と呼ばれます。
査証(ビザ)について外務省のページで調べると、「査証は、「出入国管理及び難民認定法」で定められた上陸のための要件の一つであり、入国を保証するものではありません。査証は海外にある日本国大使館または総領事館等において発給されます。日本到着時や日本滞在中に査証を取得することはできません。」と記載されています。
正直、この説明ではビザが何なのかよくわかりません。
もう一つ、出入国在留管理庁(入管)のよくある質問を見てみると、以下のように記載されています。
「ビザとは、在外公館で発行されるもので、その外国人が持っている旅券(パスポート)が有効であるという「確認」と、ビザに記載された条件により入国することに支障がないという「推薦」の意味を持っています。」
こちらのほうが分かりやすい気がしますね。
これらの説明を踏まえ、査証(ビザ)を分かりやすく言い換えると、
その国への「入国許可証」のようなものだと言えます。
査証(ビザ)は入国時に一度だけ
査証(ビザ)が入国許可証のようなものだとすると、入国時に1度だけ必要なものという説明に合っています。入国許可証は入国しようとするときには既に準備されていなければ意味がありません。そのため、事前に外国の日本大使館や領事館へ申請し、発給された査証をもって日本へ来ることになります。そして、空港などで入国する際にビザを提示し、審査官の最終的な判断を経て無事に入国できれば、そのビザの役目は終わったことになります。したがって、日本で既に暮らしている外国人が「ビザ更新をしなきゃ」というのは、本来の言葉の定義からするとおかしなことになっているのです。
「在留資格」とは?
在留資格=日本に「滞在」する条件
続いて、在留資格とは何でしょうか。同じく出入国在留管理庁のよくある質問ページを見ると、「在留資格とは、外国人が我が国に入国・在留して従事することができる活動又は入国・在留できる身分又は地位について類型化し、法律上明らかにしたものであり、現在38種類の在留資格があります。」との記載があります(2025年10月時点)。在留資格という言葉そのものを考えると、「在留=日本に居続ける」「資格=満たすべき要件、必要なこと」と考えられますが、それらが分かりやすく整理されたものだと言えそうです。
在留資格は日本での活動と期間のセット
ここで在留資格の具体例を見てみましょう。
この在留カードは出入国在留管理庁がサンプルとして出しているものです。

「在留資格」の項目には「留学」という記載があります。つまりこの方は日本に「留学」をしに来ているということです。逆に言うと、この方がもし留学ではなくどこかの企業に勤める目的で日本にいるのだとすると、それは認められた範囲(=資格)ではなくなり、在留できないということになります。
そして在留カードには「在留期間」の記載もあります。この方の場合は4年3月で2027年2月22日まで在留できることになっています。
つまり、在留資格は「日本で暮らす条件を活動内容と期間によって規定したもの」といえます。
在留資格に認定・変更・更新がある理由
いわゆるビザ申請と呼ばれる手続きとして代表的なものには次の3つがあります。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格変更許可申請
- 在留資格更新許可申請
詳細はそれぞれ別の記事にて解説しますが、「ビザ」と「在留資格」の違いが分かっているとこの3つの手続きに分かれている理由が理解できます。日本への入国許可証としてのビザを取得するために、入国してから何をするのかを事前に審査する「在留資格認定証明書交付申請(認定)」、仕事や生活が変わったために在留資格を変えるための「在留資格変更許可申請(変更)」、在留資格の期限が到来するため引き続き同じ資格で滞在し続けるための「在留資格更新許可申請(更新)」という区分です。このような定義と背景を知ると、「ビザ変更」「ビザ更新」というのは存在しない手続きだとわかります。
「ビザ」と「在留資格」を区別して間違いのない意思疎通を
「ビザ」と「在留資格」は、どちらも日本へ来るため、生活するために欠かせないものです。
しかし、ビザは「日本に入るための許可」、在留資格は「日本に滞在するための条件」です。
この違いを正しく理解することで、手続きの流れや必要書類が明確になります。
外国人本人だけでなく、雇用する企業や学校にとっても大切な知識ですので、この機会に正しい理解を持っておきましょう。
本記事の内容の一部引用元サイト:
・外務省 査証(ビザ):https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/
・出入国在留管理庁 出入国審査・在留審査Q&A:https://www.moj.go.jp/isa/immigration/faq/kanri_qa.html
・出入国在留管理庁 在留カードとは?:https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/whatzairyu_00001.html

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